久しぶりの山歩きも安心:もしもの時に困らない!山でのトイレの安全な基本知識
久しぶりに山歩きに出かけたいけれど、もしも「自然の中でお腹が痛くなったらどうしよう?」と不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。山には都合よくトイレがあるわけではなく、適切な対処を知らないと、環境への悪影響や自分自身の安全・快適さを損なうことにもつながります。
この「安心アウトドアマニュアル」では、久しぶりにアウトドアを再開する方や、安全に関する基礎知識を再確認したい方をサポートします。今回は、もしもの時に慌てないために知っておきたい、山でのトイレに関する安全な基本知識とマナーについてお話しします。事前に準備し、適切な知識を持っていれば、安心して山歩きを楽しむことができます。
なぜ山でのトイレに配慮が必要なのか
山で用を足すことは、自然の中という特別な環境で行われます。舗装された道や施設とは異なり、そのままにしておくと様々な問題が発生します。
- 環境への影響: 排泄物は土壌や水質を汚染する可能性があります。特に沢の近くなど水場に近い場所では、生態系への影響が懸念されます。また、分解には時間がかかり、見た目にも不快な状態が長く残ります。
- 衛生問題: 他の登山者が利用する場所や、景観の良い場所が汚されることは、衛生的な問題を引き起こします。
- プライバシーと安全: 適切な場所を選ばないと、他の登山者に見られてしまう可能性があります。また、足場の悪い場所や崖の近くでは、転倒や滑落のリスクも伴います。
これらの理由から、山でのトイレは「いつ」「どこで」「どのように」行うかが非常に重要になります。
事前準備で安心度アップ
山へ出発する前に、以下の準備をしておくと安心です。
1. トイレマップや情報の確認
登山ルート上に山小屋や公衆トイレがあるかどうか、事前に調べておきましょう。最近は、ウェブサイトやガイドブック、登山アプリなどでトイレの設置場所や利用可能期間(冬季閉鎖など)が確認できる場合があります。使えるトイレの場所を把握しておくだけでも、精神的な安心感につながります。
2. 携帯トイレの準備
最も推奨される方法の一つが、携帯トイレを持参することです。携帯トイレは、排泄物を固めて持ち運べるように設計されており、環境への負荷を最小限に抑えることができます。様々なタイプが市販されていますので、使いやすいものを選びましょう。
- 携帯トイレの種類: 袋状になっており、用を足した後に凝固剤で固めるタイプが一般的です。消臭効果のあるものや、処理袋がセットになっているものなどがあります。
- 使い方を練習: 事前に自宅で一度試してみると、山で慌てずに済みます。特に女性は、使用時の安定感やプライバシー確保の方法などをイメージしておくと良いでしょう。
- 持ち運び: 使用後の携帯トイレは密閉できる袋に入れ、必ず持ち帰りましょう。持ち帰り用の袋や、周囲から見えないようにするための巾着袋などを用意しておくと便利です。
3. トイレットペーパーと持ち帰り用袋
万が一、携帯トイレが使えない場合や、他の用途(軽く拭くなど)で必要な場合のために、少量のトイレットペーパー(芯を抜くとコンパクトになります)を持参しましょう。使用済みの紙を必ず持ち帰るためのビニール袋やジップロックも忘れずに。
4. ウェットティッシュ・消毒液
用を足した後や食事前などの衛生管理のために、アルコール入りのウェットティッシュや手指消毒液があると重宝します。
山で安全にトイレを利用するための知識
もし、ルート上にトイレがなく、携帯トイレを使用する場合や、やむを得ず自然の中で用を足さなければならない場合の安全な方法とマナーです。
1. 安全な場所選び
場所選びは非常に重要です。以下の点に注意して、安全で環境に配慮した場所を選びましょう。
- 水場から十分に離れる: 沢、川、湖などの水場からは、少なくとも50メートル以上離れてください。これは排泄物に含まれる細菌やウイルスが水質を汚染するのを防ぐためです。
- 登山道から離れる: 他の登山者から見えないよう、登山道から十分離れた場所を選びます。また、立ち止まって休憩する人が多い場所なども避けましょう。
- 平坦で安全な場所: 足場の悪い傾斜地や崖の近くは危険です。バランスを崩して転倒・滑落するリスクがあります。地面が安定していて、しゃがんだり立ったりしやすい平坦な場所を選びましょう。
- 植生への配慮: 高山植物が群生している場所や、自然保護区内では特に場所選びに注意が必要です。環境への影響を最小限に抑えられる場所を選びます。
2. 用を足す方法
携帯トイレを使用する場合は、製品の説明書に従って正しく使用し、処理袋に入れて持ち帰ります。
携帯トイレがない場合、かつ環境への影響を最小限に抑えるためには、地面に浅い穴を掘る方法が推奨される場合があります(ただし、これはあくまで最終手段であり、携帯トイレの使用が最善です)。
- 穴を掘る: 携帯スコップなどがあれば、地面に深さ15〜20cm程度の穴を掘ります。
- 排泄物と紙の処理: 用を足した後、排泄物は穴の中に入れます。使用済みのトイレットペーパーは必ず持ち帰ります。紙を埋めても分解には非常に時間がかかり、環境負荷となります。
- 埋め戻し: 排泄物を入れた穴は、掘り出した土や落ち葉などで完全に埋め戻し、原状回復を心がけます。
3. 使用済みのものの持ち帰り
使用済みのトイレットペーパー、ウェットティッシュ、携帯トイレなどは、絶対に山に捨てたり埋めたりせず、持ち帰りましょう。密閉できる袋に入れてから、さらに外から見えない袋に入れると、持ち帰りやすくなります。
4. 体調管理と水分補給
お腹の調子が悪くならないよう、登山前日からの食事に気を配ることも大切です。また、水分補給は熱中症予防に不可欠ですが、飲みすぎると尿意をもよおしやすくなります。休憩時などに計画的に水分を摂取し、出発前にトイレを済ませておくなど、調整することも考慮しましょう。
まとめ
山でのトイレは、事前に準備と知識があれば、安全かつ適切に対処できる問題です。携帯トイレの準備、場所選びの知識、そして「持ち帰る」というマナーを守ることで、自然環境を守りながら、私たち自身も気持ちよく山歩きを楽しむことができます。
久しぶりの山歩きで不安がある方も、この記事でご紹介した基本知識を参考に、もしもの時にも落ち着いて対処できるように準備を整えてみてください。安全な準備をしっかりと行い、素晴らしい週末アウトドアを楽しんでください。